書評 色彩がわかれば絵画がわかる
色彩の基本を説明し理解できたところで、絵画や建築物の見方をその色彩の知識を活かして見ようと試みます。
色彩の基本とは、
- 三原色
- 三属性
- 順応
- 対比
に始まり、
- 四原色説
- 進出色・後退色
- 膨張色・伸縮色
- 暖色・寒色
と続きます。
そして最後には調和の理論まで一通りの内容が記載されています。
色彩論といえば、ニュートンの科学的側面とゲーテの心理・生理的側面がありますが両方とも網羅している内容です。難しい表現もないので色彩学の初学者でもスラスラと読んでいくことができるでしょう。色彩とはなんなのかを手っ取り早く知りたい人には新書のサイズもあって適していると思います。
しかし、一つ残念な点を挙げるとすると、図が少ないことです。本書での例は色彩は目の見える人で異常のない人であれば自分で試してみることができますが、それを本書で行わずに読者の想像に委ねてしまっているのがもったいない。なかなか新書を読みながら自分で実際にやってみるのは難しいでしょう。
その点で一つマイナスですが全体的にはまとまっていて読みやすいので誰にでもお勧めのできる本です。
著者の布施英利さんは色彩学を学ぶことで物の見え方が変わってくるといいます。それが絵画であったり建物であったりアートへの見方をこの本で示しています。
色彩を学べば世の中の色への関心が高まり見方が変わってくるのは自分の体験したことでもあります。まずは体験の入門としてこの本はいかがでしょうか。